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FEATURE OF YATAI

屋台特集記事

福岡市における屋台の経済波及効果 100億円を突破!

 

屋台の経済効果104.9 億円へ

屋台基本条例(2013年7月1日)が制定されて10年を迎えました。屋台基本条例には、屋台が「福岡のまちににぎわいや人々の交流の場を創出し、観光資源としての効用を有している」と書かれています。その効用を測ることは屋台の存在意義を確認する上で重要であり、今回、その効用の1つである経済波及効果を算出しました。算出にあたっては、過去(2011年12月)の経済波及効果(注1)の手法を踏まえて計算しました。

2023年11月現在の屋台数は105軒、1日1軒あたりの利用者数は45人、1人1回あたりの屋台内消費額は1,923円で、屋台全軒での年間売上高は22.9億円となりました。

屋台内で飲食する人のうち屋台が主な目的で福岡市に来た人の割合は11.4%でした。この人たちは、屋台がなかったら福岡市に来なかった人たちであり、この人たちが福岡市内で行う経済活動(宿泊、ショッピング、移動等)の額は63.7億円でした。屋台以外を目的に福岡市に来た人の市内交通費が3.6億円あり、総計で福岡市内に生じる最終需要額は90.2億円となりました。

以上のデータをもとに、福岡市産業連関表を使って計算したところ福岡市内に104.9億円の経済波及効果があったことになります。平成23年12月の調査では53.2億円でしたので、約2倍(1.97倍)に拡大したことになります。

この増加理由は屋台1軒あたりの利用者数や屋台内での飲食費、屋台目的の人のショッピング費、宿泊費などが増加したことにあります。

注1)2011年12月に「屋台の経済効果について」(屋台のあり方研究会第4回資料)として発表された。

 

条例制定10年の効果

2013年に「屋台基本条例」が制定され、10年が経過しました。条例は市(行政)、屋台営業者、利用者のそれぞれの責務を明らかにし、遵守すべきルールや責任があることを明確にしました。その条例の中で大きな改正の1つは公募制の導入でした。現在、公募屋台が41軒となり既存の屋台64軒と合わせて105軒が営業しています。

公募制を導入した効果を測るため、ここでは公募制を導入しなかった場合を、AとBの2つの仮定を置いて、現状(今回の調査)と比較しました。仮定Aでは経済波及効果64.0億円、仮定Bでは経済波及効果45.9億円となりました。前提条件によって幅はあるものの、屋台の政策効果によって経済波及効果は、公募制を導入しなかった場合に比べて、 1.6〜2.3 倍に拡大したと考えられます。

  ① 現状 ② 仮定
(公募制を導入しなかった場合)

(① − ②)
経済波及効果
(百万円)
10,491 6,403
(仮定A)
4,088(1.6倍)
4,529
(仮定B)
5,962(2.3倍)

仮定A
1)公募屋台41軒がなかった場合で、屋台数64軒の場合。
2)上の条件以外(例1軒あたりの利用者数、利用者1人あたりの消費額など)は変わらない

仮定B
1)公募屋台41軒がなかった場合で、屋台数64軒の場合。
2)屋台人気が高まらなかった → 主目的率が6%(前回調査)のまま
3)上の条件以外(例 1軒あたりの利用者数、利用者1人あたりの消費額など)は変わらない

 

経済以外にも効果

屋台基本条例が施行されて10年。この間、公募は数だけでなく質的にも多様な屋台の登場を促しました。また、屋台営業者による営業ルールの遵守が進み、行政による屋台用の上下水道などのインフラ整備が進みました。そのことによって屋台数だけでなく、屋台営業者の意識や衛生面での改善が進み、福岡市のイメージアップにつながったと考えられます。福岡市が実施した観光客アンケートでも、屋台に行った人の約9割が福岡市の屋台に対して「良いイメージ」(「良いイメージ」「どちらかといえば良いイメージ」の合計93.0%)と答えています。

※衛生面に関するイメージは顕著に改善傾向。
※福岡市「屋台に関するアンケート調査」(2023年)より抜粋。

さらに、屋台は日本にとどまらず、海外における福岡の評価を高める一因にもなっています。

アメリカの「ニューヨーク・タイムズ」は毎年1月に「今年行くべき場所」を発表しています。2023年版では世界52カ所の中に、日本では福岡市と 盛岡市の2カ所が選ばれました。同紙は「福岡は、屋台が並ぶ日本に残る数少ない場所の1つ」と紹介しています。屋台は「YATAI」として、福岡は「FUKUOKA」として世界にアピールする効果もあったと考えられます。

 


経済波及効果の測定


ここから先は、これまでに説明した今回の経済波及効果の算出についての詳しい解説になります。

 

1 最終需要額の測定

(1)屋台の年間売上高 22.9億円

福岡市の屋台は2016年に公募が始まり、その数は現在105軒となっています。利用者数は1軒1日平均 45人(注2)、営業日数は月間で21日間、年間で252日間(注2)。これをもとに屋台の年間利用者数は1,190,700人と推計されます。さらに1人あたりの飲食費が1,923円(注2)であったことから、屋台の年間売上高を22.9億円と推計しました。

2011年と比較すると、屋台数は150軒から105軒に減っていますが、1軒1日平均の利用者数が30人から45人に伸びたことと、屋台内での1人あたりの飲食費が1,500円から1,923円に伸びたことで、屋台の年間売上高が17.3億円から22.9億円に伸びています。

注2)福岡市が公募屋台営業者に提出を求める「屋台営業報告書」より算出。

 

図表1 経済波及効果の基礎データ
  前回調査(2011年12月) 今回調査(2023年11月)
屋台数 150軒 105軒
屋台の利用者数(1日1軒平均) 30人 45人
年間平均営業日数 257日 252日
屋台の年間利用者数(全軒) 1,156,500人 1,190,700人
屋台内飲食費(1人当たり) 1,500円 1,923円
全屋台年間売上高 1,734百万円 2,289百万円

 

(2)屋台が主な目的で福岡市に来た人の屋台以外の消費 63.7億円

屋台内で飲食している人の中で、屋台を目的に来た人の割合を主目的率として算出しました。主目的率とは屋台で飲食している人のうちで、もし屋台がなかったら福岡市には来なかった人の割合です。主目的率を計算すると、屋台利用者の11.4%を占めていることがわかりました。この算出には「屋台・来訪者アンケート」(2023)を実施し、飲食中または飲食前の屋台客299人にヒアリング調査を行いました。

この主目的率11.4%を使って、年間の屋台利用者数1,190,700人のうち135,740人が主目的で来た人と推定しました。この135,740人の屋台以外での消費(宿泊、ショッピング、移動等)を、屋台の経済効果としています。福岡市が実施した観光客動態調査の結果をもとにショッピング費や宿泊費などを積み上げて算出したところ、主目的の来訪者の消費額は63.7億円となりました。

2011年12月調査では主目的率が6.0%で、屋台以外での消費額は21.6億円でしたので、約2.9倍に伸びたことになります。

図表2 主目的の人の消費額
消費項目 消費額(億円)
交通費 5.4
宿泊費 15.0
飲食費  8.6
土産費  7.6
ショッピング費  19.6
その他 7.4
合計 63.7

資料)消費額は、福岡市が令和4年に実施した観光客動態調査の結果をもとに算出。

 

「屋台・来訪者アンケート」(2023)
屋台が主な目的で福岡市に来た人の割合は11.4%で、これは「屋台・来訪者アンケート」(2023)による推計です。アンケートは2023年10月下旬から11月上旬の計4日間、天神、中洲、長浜地区の屋台で飲食中または飲食前の299人にヒアリングを実施しました。また、後述の市内交通費もこのアンケートで算出しました。

 

(3)主目的以外の人の交通費 3,6億円

屋台に主目的で来た人は、屋台以外でのショッピング費や宿泊費などを積み上げましたが、主目的以外の人の屋台外の消費は、屋台までの市内交通費のみを計上しています。主目的以外で来た人(従目的の人)の屋台までの交通費を算出したところ、徒歩、地下鉄、バス、タクシーなどで1人あたり340円(「屋台・来訪者アンケート」(2023))となりました。

従目的の人(1,054,960人)の屋台までの市内交通費は年間総額3.6億円となります。

 

(4)最終需要額 90.2億円

以上の(1)22.9億円と(2)63.7億円と(3)3.6億円を合わせた最終需要額は90.2億円となります。

図表3 最終需要額のフロー

 

2 屋台の経済波及効果

(1) 産業連関分析

経済波及効果にあたっては、平成27年(2015年)福岡市産業連関表・分析ツール「観光・イベント消費」を活用しました。分析ツール内の消費性向は、新型コロナの影響で令和2〜4年低下していると考えられるため、令和元年の数値「0.6」(総務省「家計調査報告書」福岡市「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」)を使っています。

そして、先に求めた最終需要額を分析ツール内の各業種に格付けしました。小売業の格付けにあたっては国土交通省観光庁「旅行・観光消費動向調査2022年(確報)」を利用し、各産業に配分しています。

最終需要額を各産業に格付けし、直接・第一次間接効果、第二次間接効果のそれぞれの粗付加価値額、経済波及効果を算出しました。就業者誘発者数の算出にあたっては、粗付加価値額(「平成27年(2015年)福岡市産業連関表13部門表」)および産業別就業者数(福岡市「令和2年国勢調査就業状態等基本集計結果概要」)を利用しました。

図表4 経済波及効果フロー

 

(2)経済波及効果 104.9億円

最終需要額90.2億円を各産業に格付けし、分析ツール「観光・イベント消費」を使ったところ、図表5になります。その結果、経済波及効果額104.9億円、粗付加価値額52.8億円、就業者誘発数は551人となりました。

図表5 経済波及効果結果

 

 

2023年11月30日 寄稿者:八尋 和郎

経歴)株式会社THINK ZERO代表取締役

学位論文「都市における屋台の持続的な運営環境の整備と発展的な活用に関する研究」で九州大学大学院から博士号を取得。その後、公益財団法人 九州経済調査協会に勤めるかたわら、福岡市『屋台との共生のあり方研究会』では経済効果について報告。『福岡市屋台選定委員会』副委員長を歴任。現在に至る。

 

 

 

 

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