データで見る福岡博多屋台
2024年3月22日1 全国の中の屋台
①福岡市に屋台は何軒ある?
103 軒(2024年1月末日現在)
福岡市では、道路、公園などの公有地で営業する103軒の屋台に占用許可が出されています。福岡市では2000年に「福岡市屋台指導要綱」を制定し、屋台に占用許可が出されました。さらに2013年に「福岡市屋台基本条例」が施行され、ルールに則った営業がされています。
②全国の屋台の何割が福岡にある?
全国の約9割
屋台と言っても、全国には公有地(道路、公園)にあるものだけではありません。私有地にある屋台(村)などもあります。また、歴史的な慣習として占用許可を得ずに公有地で営業している例もあります。福岡市と同様に公有地(道路、公園)で占用許可を得て営業している屋台は福岡市以外では呉市(広島県)に10軒、久留米市に8軒あるだけのようです注1)。この条件でいくと福岡には全国の9割近くの屋台が存在することになります。
注1)2023年11月時点。
③福岡の屋台の知名度はどのくらい?
観光客の知名度9割を超す
観光客アンケート注1)をみると、観光客注2)の94.2%が福岡の屋台を知っていました。他の都市では公有地(道路、公園)にある屋台はほぼ消滅しており、屋台は福岡のシンボル、観光の目玉となっています。屋台条例や新規参入制度の導入など、マスコミにも取り上げられる機会が増えたことも知名度上昇の要因となっていると考えられます。
注1)「令和5年(2023)年度屋台に関する観光客アンケート」(福岡市経済観光文化局 屋台の魅力向上担当)
注2)観光客は「直近3年以内に宿泊を伴う観光等で福岡市を訪れた20歳以上の県外居住者」
2 屋台の利用者
④屋台の年間利用者数は?
年間119万人が利用
屋台の年間利用者数は、屋台数(105軒)と1日1軒の利用者数(45人)、営業日数(252日/年)によって1,190,700人と推計されます注1)。
福岡PayPayドームの最大収容人数は40,062人注2)なので、満員のPayPayドーム約30個分に相当します。
注1)「福岡市における屋台の経済波及効果」
(https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/70065/1/2023yatainokeizaikouka.pdf?20240207163033)
(数値は2023年11月調査時点の数値)
注2)ソフトバンクホークスホームページ「施設概要」
(https://www.softbankhawks.co.jp/stadium/institution.html)
⑤屋台を主目的に福岡に来る人は何人?
屋台利用者の11.4%(135,740人)が主目的
屋台内で飲食している人のうち屋台が主な目的で福岡市に来た人(市内居住者を除く)の割合を主目的率と定義しました。この人たちは、もし屋台がなかったら福岡市には来なかった人の割合です。主目的率は屋台利用者の11.4%注1)、135,740人を占めていることがわかりました。2011年12月調査の主目的率は6.0%でしたので、2倍近く伸びたことがわかります。
注1)「屋台・来訪者アンケート」(2023) アンケートは2023年10月下旬から11月上旬の計4日間、天神、中洲、長浜地区の屋台で飲食中または飲食前の299人にヒアリングを実施しました。
⑥福岡市における屋台の経済効果は?
屋台の経済波及効果104.9億円注1)
屋台数は105軒(2023年11月時点)、屋台の利用者数年間119万人、そのうち屋台を主目的で訪れる人、13.5万人。さらに1人あたりの飲食費が1,923円であることから、屋台の年間売上高は22.9億円となります。その他、屋台を目的に来た人(主目的の人)の宿泊費や交通費、ショッピング費などを合わせると総需要額は90.2億円となります。福岡市が提供する産業連関分析ツール「観光・イベント消費」を使って試算したところ、経済波及効果額は104.9億円と推計されました。2011年12月が53.2億円注2)だったので、約2倍(1.97倍)に拡大したことになります。
注1)2023年11月試算
注2)2011年12月に「屋台の経済効果について」(屋台のあり方研究会第4回資料)として発表
(https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/70065/1/2011yatainokeizaikouka.pdf?20240207163033)
⑦屋台利用者の満足度は?
屋台経験者の満足度93.0%
前述の観光客アンケートによると、観光客の屋台に対する『良いイメージ』(「良い」「どちらかといえば良い」の合計)は78.3%。「屋台を利用した人」の『良いイメージ』は93.0%と9割を超えていました。
また、市民に対するアンケート注1)によると、市民注2)の屋台に対する『良いイメージ』は74.0%。「屋台に行ったことがある人」の『良いイメージ』は77.8%でした。
観光客、市民ともに実際に利用した人の方が『良いイメージ』を抱く割合が高いことから、屋台の料理やおもてなしは、満足度が高いと言えます。
注1)「令和5年(2023年)度福岡市市政アンケート調査(「福岡市の屋台」について)」(福岡市広聴課調査)
(https://www.city.fukuoka.lg.jp/shicho/kocho/opinion/siseianke-to/reiwa05siseianke-totyousakekkahoukoku_5.html) 注2)福岡市内に居住する満18歳以上の市民
⑧外国人は気軽に利用できる?
外国語を話せる屋台39軒、外国語メニューのある屋台69軒
「屋台営業者に対するアンケート(令和5年12月、福岡市実施)」注1)によると、外国語を話すことができる店主やスタッフがいる屋台は39軒、外国語のメニューを作っている屋台は69軒ありました。さらにクレジットカードやQRコード注2)など様々なキャッシュレスに対応する店も増えており、外国人が利用しやすい環境も整ってきています。
外国語やクレジットカードなどにどの屋台が対応しているかは、「よかなび(https://yokanavi.com/yatai/list/)」で検索できます。
注1)2023年12月、道路占用許可の申請の際に、区役所の窓口で営業者に対しアンケート調査を実施
注2)「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
3 屋台経営
⑨店主の平均年齢は?
平均年齢53.6歳注1)
福岡市によると、屋台営業者の平均年齢は53.6歳でした。最高齢は83歳、最年少は24歳です。第4回公募屋台の平均年齢は36.4歳でした。既存屋台注2)の平均年齢が60.9歳ですから、公募による新規参入で意欲的な若いチャレンジャーが増え、全体として若返りつつあると考えられます。
注1)2024年3月1日現在。国道屋台6軒を除く
注2)条例制定前(新規参入制度ができる前)から営業をしていた屋台
⑩屋台の製作費はいくら?
300万円ぐらい
昔から屋台を専門で作っている業者は赤城製作所(福岡県糟屋郡)のみになっています。製作する屋台は店主の背丈や使い勝手に合わせたフルオーダー。同じ造りの屋台は1台もなく、同社はこれまでに90~100台を製作しています。注文を受けてから引き渡すまで約2ヶ月、材料には上質の国産ヒノキが使われ、ゼロから製作すれば300万円ぐらいとなります。公募屋台の中には100万円程度で自作する人や他の工務店に製作を依頼する人も増えています。
参考)福岡市観光情報サイトよかなび「福岡の「老舗屋台」と「最新屋台」に見る職人の技。-屋台を作るプロフェッショナル-(前編)」
(https://yokanavi.com/feature/226963/)
⑪屋台の大きさ
間口3.0m・奥行2.5m以内
屋台条例施行規則では、屋台の規格は間口(横幅)3.0m・奥行2.5m以下とされています。さらに、屋台営業に必要な器材を置くスペースとして間口5m・奥行3m以内まで認められています。その範囲に屋台(間口3m・奥行2.5m)や器材を収める必要があります。屋台の高さに決まりはありませんが、安全性の観点から2.5m以下に押さえられています。
⑫優れたデザインの屋台
グッドデザイン賞を受賞した屋台2軒
近年、料理やお酒のこだわりだけではなく、形やデザインにも工夫をこらした従来とは違った屋台も登場しています。2021年度にはmegane coffee & spirits(メガネコーヒーアンドスピリッツ)が、2022年度にはTelas & mico(テラスとミコー)がグッドデザイン賞を受賞しました。
◎2021年度グッドデザイン賞
megane coffee & spirits
(福岡市中央区天神4丁目2−1 日本銀行福岡支店前)
◎2022年度グッドデザイン賞
Telas&mico
(福岡市中央区渡辺通4丁目9 スーパースポーツゼビオ福岡天神店前)
写真)福岡市
4 その他
⑬「屋台」の広報効果は?
広告費換算3.4億円
令和5年は「長浜屋台街の復活(公募屋台の営業開始)」や「屋台基本条例の制定から10年」、「屋台 DX」注1)など屋台に関わる新たな話題もあり、テレビ、新聞にも取り上げられる機会が増えました。令和5年の屋台に関する報道(テレビ84回、新聞78回)を広告費に換算したところ、3.4億円となりました。
経済産業省企業活動基本調査(2022年)によると、飲食サービス業の売上高・広告宣伝費比率は1.1187%です。これをもとに計算すると、屋台の年間総売上高22.9億円に対する広告宣伝費は0.256億円程度(22.9億円×1.1187%)と推定されます。前述のとおり令和5年の屋台の広告費換算は3.4億円ですから、通常の飲食サービス業が掛ける広告宣伝費の約13.3倍(3.4億円÷0.256億円)の広告宣伝効果があったと考えることができそうです。
広告費換算費の内訳をみると、「長浜屋台街の復活(公募屋台の営業開始)」が1.98億円と全体の半分以上を占めました。長浜屋台街の復活は、テレビ・新聞でも取り上げられ、大きな話題となりました。「屋台基本条例の制定から10年」については屋台に関する条例を持っているのは福岡だけであるため、全国に配信されています。そのほか「屋台DX」「屋台の経済波及効果」「屋台列車の運行」などの取り組みが紹介されました。「その他・屋台全般」のニュースも多く、店主や料理など多様な視点で取り上げられました。
これらは全国的に報道されたこともあり、観光客を誘引するのに十分な効果があったことが考えられます。
広告費換算・内訳
注1)屋台のLINE公式アカウント(FUKUOKA GUIDE)を友だち追加すると、長浜屋台街の屋台一覧やおすすめメニューがLINEでチェックできるほか、長浜屋台街の営業状況や混雑状況を確認できる。
参考)
・福岡市観光情報サイトよかなび「屋台基本条例制定からの10年 屋台消滅の危機からの復活!」
(https://yokanavi.com/newyatai/column/vol01/)
・福岡市観光情報サイトよかなび「長浜屋台街が復活!」個性あふれる屋台の魅力」
(https://yokanavi.com/newyatai/column/vol02/)
・福岡市ホームページ「長浜屋台街D Xプロジェクト始動!」
(https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/kankou/shisei/nagahamayataidx.html)
・福岡市観光情報サイトよかなび「福岡市における屋台の経済波及効果 100億円を突破!」
(https://yokanavi.com/newyatai/column/vol04/)
・福岡市観光情報サイトよかなび「福岡市地下鉄で「屋台列車」を運行しました!!」
(https://yokanavi.com/newyatai/train/)
寄稿者:八尋 和郎
(経歴)株式会社THINK ZERO代表取締役
学位論文「都市における屋台の持続的な運営環境の整備と発展的な活用に関する研究」で九州大学大学院から博士号を取得。その後、公益財団法人 九州経済調査協会に勤めるかたわら、福岡市『屋台との共生のあり方研究会』では経済効果について報告。『福岡市屋台選定委員会』副委員長を歴任。現在に至る。