【新規参入屋台2期生vol.3】博多らしい が 新しい! 王道名物を掲げる屋台の新星
2020年2月25日2018年12月、2度目の屋台営業候補者公募が行われ、9軒の屋台が新たに参入。これまで、数々の個性的な屋台をご紹介してきましたが、今回訪れるのは“博多らしさ”を打ち出した、王道スタイルの屋台。豚骨ラーメンに餃子、焼鳥、明太子料理など、博多と言えばコレ!が詰まった、新星屋台へご案内します。
たけちゃん fr 司(中洲)
博多屋台よっちゃん(中洲)
博多屋台 壱(天神)
19年8/1オープン
屋台歴20年!随一の腰の低さと評判の「たけちゃん fr 司」
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中洲エリアは春吉橋の北側と南側(キャナルシティ博多側)に分かれており、「たけちゃん fr 司」は、北側に位置する
福岡でもっとも有名な屋台街といえば、やはり九州随一の繁華街である中洲エリア。那珂川沿いの清流公園内には老舗や人気店が密集し、国内外からのお客さんで賑わいをみせています。赤い暖簾の先で、楽しそうな笑い声が響く「たけちゃん fr 司」をのぞいてみました。
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「屋台の公募制が始まり、本当にうれしかった。長年の夢が叶いました」と、笑顔をみせる中井さん
屋台を営むのは、中洲の老舗屋台「司」で約20年に渡り腕を磨いた、中井武司さん。「昔の屋台は『原則一代限り』がルールで、現在のように新規参入することができなかった。しかし、自分の名義で屋台を開業できる日がくることを夢見て、『司』で頑張ってきました。条例が制定され、ようやくチャンスをつかむことができました」。
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左上から時計回りに、福岡の銘柄鶏「華味鳥」の親鳥を使う「地鶏の網焼き」(¥900)、「手羽先ギョーザ」(2本¥700)、「おでん」(5個¥900)、「サバめんたい」(1本¥700)
「僕が目指すのは、ほっこりとくつろげる“昔ながらの屋台”。そのため、料理の種類もあえて絞りました」。その言葉通り、確かにお品書きに並ぶ料理は約10種と他の屋台に比べて少ない印象です。しかし、内容を見ればなるほど、納得。串物に手羽先ギョーザ、明太子料理など、“福岡の屋台でコレを食べたい!”と思わせる、選りすぐりの精鋭が並んでいます。
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ソースなどは使わない、シンプルなスタイルの「焼ラーメン」(¥900)。豚骨スープの旨味が絡み、染み込んだ細麺は、いいつまみにもなる
冬は「おでん」、夏は『司』から受け継いだ「明太子の天ぷら」、春や秋は「豚の角煮」など看板メニューは季節ごとに変わり、シメには豚骨ラーメンと焼ラーメンも外せません。ちなみに、出身店の『司』は天ぷらが名物ですが、夏に明太子の天ぷらを出すだけで、定番メニューにはしないのですか?と、伺ってみると…。
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「お世話になった方々への恩返しと、地域貢献をしていきたい」と、中井さん。「屋台随一の腰の低さ」と、同業者も太鼓判を押す
「おいしい天ぷらは、お隣の老舗『一平』さんや『司』で味わえる。みんなでお客さんを分け合って福岡の屋台を盛り上げていくのが僕たちの仕事。新しく屋台を始める方々にもその気持ちをもって一緒に頑張ってほしいし、そんな“古き良き屋台の姿”を伝えていきたいですね」。
軽快なトークと温かな人柄で、あっという間に人の心を掴む中井さん。この日、岩手から来たというお客さんも「楽しかった! 福岡に来てよかった!」と、大満足のご様子でした。
たけちゃん fr 司
住所:福岡市博多区中洲4-1 清流公園内(春吉橋北側)
電話:070-7523-7307
営業:18:30~翌1:00前ごろ/月曜、雨天 ※変動あり
19年8/1オープン
最年少21歳の店主が挑む「博多屋台よっちゃん」
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那珂川沿い、中洲の夜景を背に立つ。次から次に途切れないお客さんで賑わいをみせる
続いて訪れたのは「たけちゃん fr 司」の並びに店を構える「博多屋台よっちゃん」です。店を盛り立てるのは、福岡市内の屋台で最年少となる21歳の店主・高田吉昌さん。共に働くスタッフも全員同級生だそうで、明るく活気に満ちた雰囲気が暖簾の外にもこぼれています。高田さんは、中洲エリアの人気屋台「中洲十番」でのアルバイトがきっかけでこの道へ。
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「応援してくれた『中洲十番』の方々や親、妻やスタッフには感謝しかありません」と、店主の高田さん(左)。右は共に店を支えるスタッフの鍋川さん
屋台にしかない面白さ、店を回すことの楽しさを覚え、2018年秋には大学を退学して「中洲十番」の社員に。それから間もなく屋台公募の話を聞き、「自分のやり方で店を経営してみたい」と挑戦を決意しました。見事、審査に合格した後は『中洲十番』の社長が中古の屋台を格安で譲渡し、経営指南までしてくださったのだとか。
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左上から時計回りに、カシスオレンジ(¥750)、ハニーハイボール(¥850)。しいたけ、ネギ、アスパラなどの「野菜巻き3本盛り」(¥800)。「明太だし巻き卵焼き」(¥900)。「博多一口餃子」(¥800)
高田さんが目指すのは「博多らしさ」と「新しさ」を感じる屋台。品書きには、串物や明太子料理、餃子、焼ラーメンといった王道の屋台名物が並んでいます。一方ドリンクメニューは、バー経営を志す鍋川さんが担当。若い方や女性も楽しみやすいようにと、多彩なハイボールや果実サワー、カクテルも充実させています。
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スープが焦げ付いたり煮詰まったりしないよう、営業中も目を離さずに炊き込んだスープがおいしさの決め手
また、締めには豚骨ラーメンをお忘れなく。「博多屋台よっちゃん」の自慢は、豚の背骨とゲンコツを丁寧に炊き上げた豚骨100%のスープ。寸胴の中で骨を砕くように炊き続け、継ぎ足しながら仕上げたまろやかでクリーミーな味わいがたまりません。
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「博多豚骨ラーメン」(¥700)。麺は、人気ラーメン店もこぞって使う「製麺所 慶史」謹製の細麺。歯触りがよく、コクのあるスープによく絡む
「博多らしい屋台のスタイルを、同世代の人にももっと広めたい」と、高田さん。また「いずれはIT関連の資格取得を目指すなど、屋台経営を主としながらも多方面に事業を展開していきたい」と、さらなる目標を語ってくれました。この日同席した東北からのお客さんは「若い方がやっている屋台は気軽に入りやすいし、活気があって楽しい」と一言。若さと情熱あふれる新星の誕生で、中洲の夜はますます盛り上がっています。
博多屋台 よっちゃん
住所:福岡市博多区中洲4-1 清流公園内(春吉橋北側)
電話:080-5281-6416
営業:18:00~24:00ごろ/日曜、雨天
19年12/4オープン
息の合った連携プレーが光る「博多屋台 壱」
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地下鉄天神駅より徒歩2分の好立地に立つ
昭和通り沿い、福岡銀行前で温かな光を灯すのは、19年12月に開店したばかりの「博多屋台 壱」。大分出身の店主・渡辺さんは、屋台仕事未経験からの挑戦です。「プライベートでも通っていた大好きな屋台を自分の手でやってみたい」と、一念発起。営業の方は、まだまだ慣れていない部分もあるのかな?と思いきや……。
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左から、オーナーの渡辺さん、新留さん、店長の今薗さん。「頼もしいスタッフに恵まれ、本当に心強いです」と渡辺さん
その心配は、杞憂に終わりました。店を共に支えるのは、中洲の屋台で7年以上経験を積んだという今薗さんと新留さん。強力な右腕を2人も携え、連携のとれたチームワークで屋台を盛り上げています。「どんなものがお客さんに喜ばれるのか?」と、サービスや料理、ドリンクメニューも3人で話し合いながら考えているのだとか。
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左上から時計回りに、大鍋の中には赤味噌で煮込んだもつ煮込み(¥650)が。アルコールはチューハイ¥450〜と良心価格。「鶏の唐揚げ」(単品¥500)、おでんは1個¥100〜。ネタには博多らしい「餃子巻き」(¥150)も
席に着いてまず運ばれてくるのは、お通し(¥300)の「鶏の唐揚げ」。屋台でお通しは珍しいかもしれませんが、これは嬉しいサービスです。唐揚げは「博多屋台 壱」の名物。渡辺さん秘伝のタレに漬け、フライヤーでカラリと揚げているため、衣はカリッ、身はジューシーで一度食べるとヤミツキに。お通しとして食べても、追加注文続出の人気ぶりです。
※最初から単品の「鶏の唐揚げ」を注文した場合、お通しは提供されず、お通し代も不要
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昔ながらの平たい「てぼ」で、麺を軽快に湯切り
その他、「博多華味鳥」で作るつくねなどの焼鳥から、手羽先明太子、鶏皮餃子なども用意。大分名物の鶏料理と博多らしさが融合したような逸品が並びます。もちろん、締めには豚骨ラーメンも欠かせません。豚骨と鶏ガラを8対2で仕上げるスープは、コクがありながらも後口はスッキリ。飲んだ後にもサラリと食べられる絶妙なバランスです。
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豚骨スープにもつ煮込みのタレを合わせ、コクと甘味が増した「もつラーメン」(¥800)。国産牛モツもプリプリ!
少しだけ食べたい時にオススメの「ハーフラーメン」(¥500)から、ラーメンの元ダレで煮込んだ焼豚がのるチャーシュー麺(¥850)や、焼きラーメン(¥750)など、バリエーションも約8種と豊富。気分に合わせて選べるのが嬉しいですね。メニューに「博多らしさ」と創意工夫が生きた天神屋台の新星。ぜひ、ふらりと立ち寄ってみては?
博多屋台 壱
住所:福岡市中央区天神2-13-1(福岡銀行本店前)
電話:090-9401-9728
営業:18:00ごろ~24:00ごろ/不定休
【あとがき】
“博多らしくて 新しい”屋台で、福岡と屋台の楽しさを発見&再確認! 県外の方も、地元の方も、サクッと飲んで食べて、博多ならではの屋台はしごを満喫してくださいね。