博多ならではの伝統芸能とおもてなしを地元で発信・継承していきたい

はかた芸処 わ乃桂(わのか) 代表 渡邉桂子さん

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歴史的なスポットや伝統文化体験など、福岡観光をさらに楽しむポイントを、地元の歴史や文化に精通する皆さんに教えていただく「地元の人に聞く!福岡の歴史・文化の魅力」インタビュー。今回は伝統芸能や伝統文化の継承に尽力している、「はかた芸処 わ乃桂」代表の渡邉桂子さんにお話をうかがいました。

取材対象者紹介

渡邉桂子(わたなべかつらこ)さん
博多区園町出身。3歳から日本舞踊をはじめ、成人してからは子どもたちに手ほどきを行っていた。その後、福岡県中間市にて古民家カフェ経営などを経て、2019年から「博多券番」にてプロの伝統芸能者として活躍。伝統芸能や伝統文化を継承していくため気軽に楽しめる場所を作りたいと、2023年、川端通商店街に「はかた芸処 わ乃桂」を開業した。

はかた芸処 わ乃桂
所在地:福岡市博多区上川端町4番220号
TEL:092-292-9472
Mail:katurako2631@gmail.com
営業時間:18:00~23:0
定休日:日曜
https://www.hakatageidokorowanoka.com/

伝統芸能を継承したいと「はかた芸処 わ乃桂」をオープン

「はかた芸処 わ乃桂」をオープンされる前からプロの伝統芸能者として活動されていたそうですが、福岡市の歴史や文化に関わられたのは、その頃からでしょうか。

私はこの辺りで生まれ育ちまして、3歳から始めた日本舞踊のお稽古場は下川端通商店街にありましたので、幼い頃から自然に、博多の歴史や伝統文化にふれ、関わってきたのではないかと思います。

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生粋の博多っ子でいらっしゃるんですね。その博多で日本舞踊の道を進まれたそうですが、その後活躍されていた「博多券番」を独立しようと思われたのはなぜでしょうか。

芸妓になる前から、伝統芸能を継承していくためのイベント開催などに携わっていたのですが、もっと気軽に伝統芸能が体験できる場所があれば、よりたくさんの人が楽しめるのではと思いまして。独立して作ることにしました。やがてそれが、伝統芸能の継承にもつながるはずだと考えたこともありまして。

伝統芸能を継承していきたいと意識し始めたのは、いつ頃ですか?

「継承する人が減少している、このままでは、いずれ伝統芸能がなくなっていくのではないか」と感じた、20年くらい前だと思います。その後も、伝統芸能のイベントや後進の育成など継承活動を続けていくなかで、ご縁があった「博多券番」にもお世話になりましたが、芸妓を続けていくよりも、伝統芸能を残したいという想いのほうが強かったからです。

それで独立をお決めになったと。お辞めになってから、どのくらいでお店をオープンされたのですか?

1日でも早く体験できる場所を作りたいと考えていましたので、すぐに行動しました。絶好のタイミングで、お店としてふさわしい場所も見つかりましたので、「博多券番」を辞めてから1、2ヶ月後から構想を始めたと思います。

やはり博多にお店をと考えていらしたのですか?

博多ならではの伝統芸能を体験していただくのですから、博多でなければと考えていました。しかし、まさか慣れ親しんだ川端通商店街で素敵な物件が見つかるなんて奇跡だと。うちの本家は園町にあって、古くからうちわや扇を販売していた博多商人なんです。ご先祖様が導いてくださったのではと、その時は家族も一緒に喜んだものです。

 

博多ならではの「おもてなし」も体験できるから「はかた芸処」に

「はかた芸処わ乃桂」で楽しめる伝統芸能は、博多でずっと受け継がれてきたものなのでしょうか?

博多は昔から「芸どころ博多」と呼ばれていましたが、実際に博多発祥の踊りや舞があったわけではありません。

飛鳥~平安時代に外交の迎賓館として「鴻臚館(こうろかん)」が作られ、室町時代以降もすぐそばの荒津浜(現在の大濠公園)が日本と海外をつなぐ玄関口だったそうですが、そこを往来する国内外の人々を、さまざまな芸や舞、音楽などでもてなしていた。そのおもてなしこそが、「芸どころ博多」と呼ばれる所以ではないかと考えています。

ですから、伝統芸能とともに継承していきたい、博多ならではの「おもてなし」も体験していただけるお店にできればと、店名にも「はかた芸処」と付けました。

 

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「世界との玄関口」だったからこそさまざまな文化の発祥に

伝統芸能を通じて、博多の歴史にも明るい渡邉さんだからこそお考えになる、福岡市ならではの歴史的・文化的な特徴や価値は何でしょうか?

ういろう、うどんなど、実は博多が発祥というものが多くあるのですが、それは、国内外を往来する人々とともに、さまざまな文化が博多に入り、まずは地元の人が体験してから国の中央に持って行ったのではないかと。博多の人が新しいもの好きと言われるのも、そのような歴史背景があるからではないかと思います。

昔から「世界との玄関口」であり、それによってさまざまな文化を日本中に発信してきたことが、福岡市の歴史的・文化的な特徴であり、価値でもあると思います。

 

舞台後も楽しく過ごせる「伝統芸能」体験を

今なお国内外から多くの人々が訪れる福岡市ですが、ぜひ立ち寄って欲しいという、渡邉さんおすすめの歴史的スポットや文化体験スポットを教えてください。

福岡はさまざまなグルメが楽しめますし、東長寺などお寺めぐりも素敵なのですが、文化体験できる施設がなかなか無いんです。なので、やはりここしかないと(笑)。「はかた芸処 わ乃桂」をおすすめします。

確かにこちらでしたら、伝統芸能・文化を楽しむことができますね。「はかた芸処 わ乃桂」のことを、もう少し教えていただいてよろしいでしょうか。

伝統芸能というと敷居が高いと思われがちですが、能や日本舞踊などの演目を楽しんでいただいたあとは、私はもちろん、ほかの演者とお話ししながら、一緒に和食やお酒を楽しんでいただけるのが特徴です。その中でご縁ができて、次は別の舞台も見に行こうかという流れにしていければいいなと思いまして、食事スペースは皆さまがお話ししやすい、コの字型のカウンター席にしました。

 

 

演者とお食事までできるなんて、素敵ですね!インバウンドの人も多く利用されているのでしょうか。

インバウンド事業を始めたのは2024年6月からですので、まだ5ヶ月ほどということもありまして、さほど多くの方にご利用いただいてはないんですけれども、最近は日本舞踊を見ていただいて、お座敷遊びをやっていただいたりして、インバウンドの皆さんにも楽しんでいただいております。

外国人は前のめりで盛り上がるイメージがあったのですが、実際は物音を立てず、静かにご覧になっているんです。「楽しくなかったのかな」と心配になって聞くと、「アメージングすぎて、何も言葉が出ませんでした」とほとんどの方がおっしゃって。伝統芸能の持つ力は本当にすごいと実感しましたので、これからもどんどん発信していけたらと思います。

 

ぜひ体験していただきたいですね。そのほか、地元民だからこそ知る穴場的なスポットはありますでしょうか。

冷泉荘の横にひっそりとある「川端大神宮」です。江戸時代、享保の大飢饉の際に私財を投げうって難民救済をし、その功績から黒田藩の許可を受けて、この地で商いを始めた、直方出身の桜田屋長野家という酒造家がいたのですが、その屋敷の敷地内に、お伊勢さんを勧請したのが始まりなのだそうです。

そのような歴史がある神社ですので、川端通商店街の中で構成された10組が、毎月交代で「月読祭」をしながら大切に守っています。結界を張っているそうなので、境内に入って願い事をすれば叶うと言われています。観光の際に、ぜひ立ち寄ってみてください。

 

情報発信や観光づくりで「もう1泊したい」と思える福岡に

福岡市観光や伝統文化をより広く伝えていくためには、どのようなことが必要だと思いますか?

福岡にはグルメだけでなく、先ほど申し上げたように、さまざまな文化の発祥となっているお寺など、歴史的なスポットもたくさんあります。ただ、残念なのは、福岡には見どころがないと思われているインバウンドの人々が多いということです。私たち地元の人間も含めて、もっと福岡市内の観光スポットを発信していきたいですね。

あとは、やはり文化体験施設がもっと増えるといいなと。大きな伝統文化の体験施設であるとか、旧市街のような街並みだとか、福岡で2泊3泊して楽しみたいと思っていけるところがたくさんできれば、それが伝統文化の継承にもつながるのではないかと思います。当店も、もっと利用していただけるよう、盛り上げていきたいですね。

 

最後に読者のみなさんへ、メッセージをお願いできますでしょうか?

博多にもう1泊してください(笑)。歴史的なスポットもありますし、まだ多くはないですが、伝統芸能・文化を体験していただける当店のようなスポットもあります。1泊だけでは食事のみで終わってしまいますので、もう1泊して行動範囲を広げていただき、福岡市ならではの観光や体験を、より楽しんでください。

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インタビューで紹介したスポット

舞台の変化も必見!伝統芸能と和食を楽しむ「はかた芸処 わ乃桂」

博多川に面した風情のある立地の店舗では、能や日本舞踊などの伝統芸能・文化体験を楽しんだあとに、季節を感じる和食コースが楽しめます。演目によって変わる舞台の襖絵など、代表こだわりの店内も見どころがたくさんあります。※各コースとも予約制、詳細はホームページで

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