水景と緑が心潤す、福岡一のオアシス「大濠公園」
2017年1月11日福岡市のほぼ中央に位置する「大濠公園」は、福岡に暮らす人なら誰もがきっと一度は訪れたことのある場所の1つ。博多や天神の都心部から、地下鉄やバスで気軽に行けるリラクゼーションスポットとして親しまれています。
公園の総面積は約40万m²。その約半分を占めるのが大きな池で、池の周囲には約2km の周回園路が整備されています。
公園を歩けば、ベンチでおしゃべりしたり読書を楽しむ人、ジョギングする人、犬を散歩させる人など…思い思いに公園を満喫する人々の姿。
公園の魅力を紹介する前に、ここで大濠公園が誕生した歴史を少し振り返ってみましょう。
福岡城址のお堀跡を活かして
この場所はかつて博多湾の入り江であり、福岡藩初代藩主・黒田長政が築いた福岡城の外堀として城の護りとされていました。明治維新で福岡城が廃城になると、築城時に今の天神界隈まで築かれていた肥前堀と呼ばれるお堀が埋め立てられたことにより、水の循環が滞って環境悪化の原因になることが懸念されたそうです。それで、この大濠を埋め立てる計画がいくつか立てられたといいます。
その中にはなんと遊園地化計画もあったそうですが、最終的には「大濠を活かそう」と公園にする計画に決まり、1929年(昭和4年)に開園。1975年に開催された「福岡大博覧会」の会場にもなりました。
海外のさまざまな公園を参考に考えられたそうですが、戦後に移設された浮見堂があることから、中国浙江省の名所・西湖をモデルにしたようだともいわれているようです。
園内は中央・東・南入口のほか東西南北の道から自由に出入りでき、児童遊園、日本庭園、能楽堂、4つの橋で結ばれた中の島や浮見堂など散策スポットがいろいろ。
最寄りには福岡城址、舞鶴公園、鴻臚館跡展示館、福岡市美術館などの立ち寄りスポットもあります。
周回園路はジョギングロードと歩行者道に分かれているので、池から吹く心地よい風と緑に癒されながらゆったりと散策が楽しめます。
では、ちょっと歩いてみましょう。
緑に恵まれた野鳥たちの楽園
緑の多い大濠公園は「野鳥の森」としても知られています。福岡市を地図で見てみると、面白い発見ができるんですよ。大濠公園から南南西に下った早良区にある「背振山」から北上して、城南区「油山」、中央区「福岡市動植物園」、そして大濠公園を通ってすぐ北にある「西公園」まで、緑の帯になって続いているため、渡り鳥などが羽を休めるのに格好のエリアなのだとか。
いにしえを偲ぶ万葉歌碑も
橋を渡って中の島を通ると、松島と呼ばれる松林の中に建てられた石碑に出会います。
「しろたへの袖の別れを難(かた)みして 荒津の浜にやどりするかも」
この万葉歌碑は、「あなたとこのままはなればなれになることが惜しいので、荒津の浜で一夜の宿をとってしまった」という意味。当時、この周辺は大きな入り海になっていて、船が出入りしていたそうです。都へ戻る人か、あるいは唐などへ派遣される役人が、見送る人とこの浜で別れを惜しんだ時に詠んだものといわれています。そんないにしえのロマンチックな光景に思いを馳せながら歩いてみるのも素敵ですね。
ボート遊びや飲食スポットでリフレッシュ
ひとしきり歩いて小休止したくなった時も、池に面して至るところにベンチなどが充分に設置されているので、すぐに腰かけて寛ぐことができるのも大濠公園の魅力です。
2015年2月には「ボートハウス大濠パーク」がリニューアルし、公園内はより洗練された雰囲気になりました。ここでは、人気の白鳥ボートなどの貸しボートに乗ったり、水景を楽しみながら飲食も楽しめます。
ゆっくり歩いて、一周は40分程度。時間に余裕があれば、日本庭園や福岡城址などに立ち寄って、さらに心穏やかなひとときを過ごすのもおすすめです。観光や出張の合間のちょっとしたリフレッシュに。福岡一の水と緑のオアシスがきっと心を潤してくれることでしょう。