先人から受け継いだ博多の祭りの伝統と地域文化を守り続けたい

博多総鎮守 櫛田神社 権禰宜 髙山 定史さん

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歴史的なスポットや伝統文化体験など、福岡観光をさらに楽しむポイントを、地元の歴史や文化に精通する皆さんに教えていただく「地元の人に聞く!福岡の歴史・文化の魅力」インタビュー。今回は福岡育ちで櫛田神社で権禰宜を務める、髙山定史さんにお話をうかがいました。

取材対象者紹介

髙山 定史(たかやま さだふみ)さん
1977年生まれで、 大学在学中に神職の資格を取得し、卒業後に櫛田神社へ奉職した。長年にわたり広報担当を務め、現在は総務課長と婦人会事務局長を兼任している。ほかに福岡県神道青年会副会長などを歴任し、古来から博多を見守ってきた櫛田神社や博多の街を、未来へとつなげるべくまい進している。

博多総鎮守 櫛田神社
所在地:福岡市博多区上川端町1-41
TEL:092-291-2951
本殿参拝時間:4:00~22:00
交通アクセス:福岡市地下鉄七隈線「櫛田神社前駅」より徒歩2分

博多の祭りと地元を守り続けている「お櫛田さん」

創建からの歴史やご祭神など、櫛田神社について教えてください。

当社は奈良時代757年に伊勢国松坂の櫛田宮(現、三重県松阪市・櫛田宮)から「大幡主命」(おおはたぬしのみこと)を勧請し、古代より港町である博多の安全を祈願したのが始まり。そして勧請時期は定かではない伊勢神宮のご祭神「天照大御神」(あまてらすおおみかみ)と、弟君で平安時代の941年に山城国園社(現、京都・八坂神社)から勧請した「須佐之男命」(すさのおのみこと)の三柱(みはしら)がご祭神です。

お祭りの多い博多に鎮座するご祭神にはそれぞれ役割がありまして、災いから博多を守る大幡主命は厄除祈願の「博多節分」、太陽神とも言われ豊作を祈る神様である天照大御神は、秋の実りに感謝する「博多おくんち」を。悪霊退散や厄除けにご利益があるという須佐之男命は「博多園山笠」を司っています。

また「博多園山笠」は国指定重要無形民俗文化財で、「山・鉾・屋台行事」のひとつとしてユネスコ無形文化遺産にも登録。5月に行われる「博多どんたく」の源流とも云われ、そのパレードの先頭をいく「博多松囃子」(はかたまつばやし)も国指定重要無形民俗文化財と、国内外で評価を受けるお祭りが2つも存在する神社は珍しいのではないかと。それも当社の特徴ではないかと思います。

このように櫛田神社は、お祭りなどの伝統や文化を継承してきた博多の総鎮守・守り神ですが、けっして格式が高いわけではなく、氏子地域と共に博多独自の歴史と文化を刻みながら今日に至っている神社ですので、昔から博多っ子には「お櫛田さん」と言って親しんでいただいています。

 

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御神殿の特徴や境内にあるそのほかの神社について教えてください。

御神殿は向かって真ん中に大幡主命、右に天照大御神、左に須佐之男命が鎮座されていますが、それぞれのご祭神に本殿内陣(お部屋)があるのが特徴です。これは九州平定時の焼失後、豊臣秀吉によって再興される前は、境内に大幡主命は櫛田宮、天照大御神は大神宮、須佐之男命は園宮とご祭神それぞれの社殿が存在した名残りなんです。ご参拝の際に拝殿の外からご覧になってみてください。

境内左奥にある「夫婦恵比須神社」(めおとえびすじんじゃ)は、恵比須様とその奥様である玉櫛姫が祀られている珍しい神社で、大漁満足や商売繁盛、夫婦円満にも御利益があると言われています。また、向かい側にあるご神木の夫婦銀杏は樹齢300年以上で、1本の幹から3本の雄木と1本の雌木が寄り添っており、こちらも珍しい木でして。夫婦円満や良縁にご利益があると、女性の方がよくお参りされています。

境内右奥にある「注連懸稲荷神社」(しめかけいなりじんじゃ)は一般的なお稲荷さんと同じですが、博多では「あしどめ稲荷」と言われ、お客様が店前で足を止めてもらえるよう祈願する、商売繁盛のお神様です。決して多くはないですが、朱塗りの鳥居が並んでいる様子が特に外国からお越しになる方に人気のようです。

2025年の式年遷宮事業の一環として「夫婦恵比須神社」も新しくなりましたし、境内には櫛田神社ならではのみどころや、四季折々の花も楽しめますので、それらを楽しみながら、ゆっくりご参拝いただければと思います。

奉職してから知った神職だからこそできること

髙山さんが櫛田神社に奉職された時期や経緯などをうかがえますでしょうか。

大学卒業後奉職しまして、20年以上になると思います。神職の資格は、大学時代に休みを利用して、伊勢の皇学館大学で取得しました。実は私の実家は北九州の神社なのですが、父が博多で勤めるという二足の草鞋状態でして。神社のお子さんなら鳥居をくぐって「行ってきます!」みたいな感じを想像されると思いますが、私の場合はごくごく普通な家庭で育ちましたので、神社は身近なようで身近でない存在でした。

その後も神職に興味はあったものの、大学は商学部に通っていましたし、堅苦しいイメージを持っていたのと、自分に向いているのかどうかと疑問に思っていたこともありましてほかの道も考えていました。いろいろ悩みましたが、神職の資格も取っていたこともありまして、最終的に卒業後は奉職することに決めました。そして、何事も中途半端が一番よくないですから、決めた以上は頑張ろうと思いました。

 

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実際に奉職されてからはいかがでしたか?

奉職してみたら、実際はとても魅力的で面白いんです。伝統ある神事や行事を通してさまざまな分野の人とこれだけ接する仕事もないですし、七五三や結婚式、お宮参りなどさまざまなお祝いごとや節目に関わることができるのは、特殊な資格を持った我々にしかできないですから。しかもよく百年企業って言いますけれども、神社は100年どころではない。このように長い歴史の一部に携われるのはすごいことだと。

学生の頃はそれらを理解していなかったからこそ、神社や神職を遠い存在に感じていたのかもしれないと、この歳になってそう実感しています。

地元に根付いた「博多の祭り」とコンパクトに楽しめる街が魅力

福岡育ちの髙山さんは、幼い頃から地元の歴史や文化にふれられていたのでしょうか?

学校の教科で言うと日本史が好きでしたが、神社仏閣にすら興味を持ったのはこの世界に入ってからですので、幼い頃から特に福岡や博多の歴史や文化にふれてきたということはなかったと思います。

櫛田神社の神職である髙山さんだからこそお考えになる、博多ならではの歴史的・文化的な価値や魅力はどのようなことでしょうか?

やはり博多ならではのお祭りです。博多は都会でありながら「博多園山笠」など四季折々のお祭りがあるからこそ、そのお祭りを通じて、博多の人同士の縦と横のつながりができあがっているコミュニティだと思います。都市部にありながらそのような相互扶助を大切にしている地域はすごく珍しいのではないでしょうか。

そのうえで皆さん祭りにプライドを持ち、一年中そのことを考えている。どんなに年齢を重ねても、博多の人たちはお祭りに対する情熱を持ち続けているのです。といっても、伝統のお祭りを特別なことと捉えるのではなく、ごくごく当たり前のこととして代々受け継いでいる。そのように自然と地元の人々に根付いている「博多の祭り」が魅力であり、価値ではないかと思います。

また、博多の歴史や伝統文化というと、どうしても寺社仏閣という感じがするのですが、「博多仁和加」などの伝統芸能や、博多人形や博多織、博多鋏(はかたばさみ)、博多曲物(はかたまげもの)など、伝統工芸品もたくさんありますし、食文化も全国に誇れるものがあります。なおかつ、コンパクトなエリアでさまざまな楽しみかたができる、それも博多ならではの魅力だと思います。

博多の歴史や文化を感じるなら古い街並みや櫛田神社で

福岡(博多)観光の際に訪れて欲しい歴史的スポットや文化体験できるスポットはどこでしょうか?

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歴史や伝統文化を感じるのであれば「博多千年門」のあたり、要するに「博多旧市街」がおすすめです。「博多園山笠」の存在で「櫛田神社」はすごく有名ですが、博多はお寺も多い街でして。承天寺や東長寺など格の高いお寺もたくさんありますし、博多の昔の街並みも残っているので、歴史や文化を感じていただけると思います。

また、神社仏閣が多い分、都会ながら緑が多くあり、四季折々の花や風景を楽しめるのがいいと思います。また、このエリアには地元の人しか知らないようなスポットやお店もありますので、散策しながら楽しんでください。

櫛田神社も博多の歴史や文化を体感できるスポットだと思いますので、境内の見どころを教えてください。

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櫛田神社ならではといえば、まずは楼門のそばにある「櫛田のぎなん」です。“ぎなん”は博多弁で銀杏のことでして、不老長寿のご利益があるという樹齢千年以上の御神木です。その近くの楼門天井にある「干支恵方盤」(えとえほうばん)は珍しいものではありませんが、当社のものは博多人形師が作成しておりますのでまた違う趣があると思います。その年の恵方を示す針は、1月1日の0時ちょうどに神職が竹で変えております。

拝殿の少し手前にあるのが「霊泉 鶴の井戸」です。御神殿の下から枯れることなく水が湧き出ていることから、こちらも不老長寿のご利益があると言われております。その先にあるおみくじは、日本語・英語・中国語・韓国語・台湾語と5か国語に対応しておりますので、外国からの方にも楽しんでいただいているようです。

拝殿で注目していただきたいのは、屋根の彫刻「風神・雷神」。風神・雷神自体は特に珍しくありませんが、雷神が「雨を降らして、博多の人を困らせよう」と持ち掛けたところ、風神が「嫌だよ」とあっかんべーをしているユニークなものです。ほかにも拝殿の屋根にあるうさぎや龍といった縁起のよい彫刻、中神門にはご祭神の紋をあしらった提灯、中神門の左右の出入口には「櫛田のぎなん」の四季を表した八女提灯もあります。

神社仏閣であればどこでも同じだと思うのですが、祈りの場であると同時に、彫刻や提灯など日本の伝統文化・技術を見て感じていただける場所でもあると思います。ひとつひとつの装飾に意味がありますので、それを感じていただきながらご参拝を楽しんでいただければと思います。

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博多のお祭りに関連するものも観ることができるのでしょうか?

博多のお祭りに関連するものも観ることができるのでしょうか?

そうですね。「博多園山笠」関連ではご神木の既存する一帯を清道(せいどう)と言いまして、祭りのクライマックスである「追い山笠」で舁き山笠が櫛田入りする清い場所です。そして、御神殿の右横に「飾り山笠」もあります。軍記ものやおとぎ話などその時代に反映したものをテーマにした飾り山笠は、7月1日~14日夜まで福岡市街地に13基(※)が展示され、祭りの後は飾り山笠も舁き山笠も壊して毎年新しいものを作るというのがルールです。もったいないという声もありますが、それが人形師さんや山大工さんの技術継承につながり、博多商人の粋を感じる慣習です。
※2024年現在

ただし当社の場合は山笠が夏の例大祭であるため、1年間展示することを許されておりますので、新たなものに替える毎年6月初旬から下旬までを除き、いつでも見ていただくことができます、

そして、飾り山笠の見送り(※)の前にある神輿庫では、秋の「博多おくんち」で街を練り歩く御神輿を安置しています。櫛田宮、大神宮、園宮と三基ありますが、例年当番となった町内の一基しか出しません。ただ、25年に一度の式年遷宮を迎えた時だけ三基同時に出しますので、その時はさらにお祭りが盛り上がります。近いところでは2025年が式年遷宮ですので、博多おくんちにもぜひお越しいただければと思います。※うしろ側のことを指します。

そのほかにも、横綱が奉納した「力石」や、太古の時代はすぐそばまで海だったことを感じる南神門付近、豊臣秀吉の九州平定後、再興のシンボルともなった「博多べい」など、博多の歴史や文化を感じていただけるところがたくさんありますので、博多へお越しの際はぜひご参拝ください。

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受け継いだものを守りながら祭りが盛んな街であり続けてほしい

これからの福岡市観光や文化発信で、髙山さまが大切だと思うことはなんでしょうか。

時代が変わればもちろん変わらなければいけないものはありますが、人を魅了するものをただどんどん作っていこうというのではなく、変わらずあり続けるということもひとつの魅力だと個人的には思います。昔からのお祭りを変わらずに守ってきたから評価されて、国の重要文化財やユネスコ無形文化遺産にも登録されて。ただ、登録されたからといって「じゃあ新しいものに挑戦します」というものではないとは思います。

先人たちが守ってきたものをできるだけ変えずに受け継いでいく。それぞれの分野で受け継いだものを守る努力をし、さらにその魅力を発信していこうとする。その原動力があるからこそ、博多は元気がある街であることは間違いないのかなという感じがします。

そもそも先人たちに伝統文化を守っていただいたおかげで、発信できる魅力的なものがたくさんあるというのは、それだけでもすごい財産だと思いますので、それらを受け継ぎながら博多や祭りの歴史に対する付加価値を高めることができたらいいなと。そして観光に訪れる人たちに、その良き伝統を感じながら楽しんでもらえれば嬉しいですね。

櫛田神社として考えると、博多が今までどおり祭りを盛んに執り行っていく街であってほしいというのが願いです。先ほども申し上げたとおり、神社は祈りの場所ではありますが、地元コミュニティの場所だとも考えています。またお祭り以外にも初詣など家族や友人同士が集まるきっかけとなるような、人と人をつなぐ場でもあり続けたいと思います。

福岡市を代表する観光スポットでもありますので、これからも皆さんに喜んでいただくと同時に、博多の街で伝統を守る地域の人々同様、ここから博多文化の発信をしながら最大限に神社を守っていき、なおかつ皆さんのコミュニティの場所としてあり続ける。そうすることが、自然と皆さんが魅力的に思える街づくりのお手伝いができるのではないかと、そんなふうに考えています。

 

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最後に読者のみなさんへ、メッセージをお願いできますでしょうか?

櫛田神社の歴史は古く、博多の魅力がたくさん詰まった神社です。境内は決して広くはありませんが、お話ししたように博多の歴史を今に伝えるさまざまなものがたくさん残っておりますので、参拝をしながら、博多の歴史や伝統文化を一緒に楽しんでいただければと思います。

インタビューで紹介したスポット

博多っ子を見守り続ける「博多園山笠」の聖地「櫛田神社」

1250年も博多の街を守り続けてきた博多総鎮守。地元博多っ子「お櫛田さん」と呼ばれ、親しまれています。毎年2月の「博多節分」で日本一の「おたふく面」が登場することや、「博多園山笠」のクライマックス「追い山笠」で「櫛田入り」が行われることでも有名。境内には、博多の歴史や伝統文化を感じることができるスポットも多く、国内外から多くの参拝客が訪れています。

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