岡本喜八監督特集【福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ】
開催終了 百道・早良エリア日本映画の新しい旗手として注目された岡本喜八監督の特集
岡本喜八監督について
1924年、鳥取県出身。明治大学卒業後、1943年に東宝入社、助監督となる。しかし戦局の悪化により招集され、松戸の陸軍工兵学校に入隊。豊橋市の第一陸軍予備士官学校で終戦を迎える。その後東宝に復帰、マキノ雅弘や成瀬巳喜男監督の助監督を務める。『独立愚連隊』の脚本が認められて監督へ昇進。『結婚のすべて』(58年)で監督デビューする。監督第5作が自ら脚本を書いた『独立愚連隊』(59年)で、一躍若手監督の注目株となり、『独立愚連隊』は人気シリーズとなる。その後も『江分利満氏の優雅な生活』(63年)『ああ爆弾』(64年)『日本のいちばん長い日』(67年)などバラエティに富んだ作品を監督。東宝を代表する監督へと成長していく。東宝退社後も『ダイナマイトどんどん』(78年)『大誘拐RainbowKids』(91年)など社会性と娯楽性を兼ね備えた見事な作品を監督している。89年紫綬褒章受章。2005年食道がんのため死去。遺作は『助太刀屋助六』(2002年)。
岡本喜八監督の特徴として、戦中派と言われるシニカルな視点、そして細かいカット割りによる軽快で娯楽性豊かな演出がある。特に群像劇には抜群の切れ味を見せ、日本を代表する監督の一人であった。
[観覧料]
600円(大人)、500円(大学生・高校生)、400円(中学生・小学生)
※定員制。各回入替制。
※チケットはすべて当日券。前売り券はありません。(チケットの販売は上映の1時間前からです。)
※障がい者の方は無料。福岡市在住の65歳以上の方は300円。(手帳や保険証などの提示が必要です。)
※「わの会」会員の方は300円。(会員証の提示が必要です。)
[上映作品]
結婚のすべて
8月7日(水曜日)14時
8月10日(土曜日)11時
8月16日(金曜日)11時
監督:岡本喜八 出演:雪村いづみ 上原謙
1958年/35ミリ/モノクロ/84分/東宝
土井康子は兄や姉の平凡な結婚生活が気にくわない。康子はモデルをしながら恋愛結婚を夢見ていた。康子は、夜はバーテンダーをしている学生の浩と出会い好きになる。また雑誌編集長の古賀は康子の姉・啓子を記事にしようと追いかける。岡本喜八監督の監督デビュー作。アイドルスター雪村いづみを主役とした恋愛映画だが、そのテンポの速い演出が話題となり、新しい世代の監督誕生として注目された。
独立愚連隊
8月8日(木曜日)11時
8月10日(土曜日)14時
8月16日(金曜日)14時
監督:岡本喜八 出演:佐藤充 雪村いづみ
1959年/35ミリ/モノクロ/109分/東宝
第二次大戦末期。中国山岳地帯の日本軍の中に独立愚連隊と呼ばれる小隊があった。各部隊のクズばかりを集めたと評判の部隊に、従軍記者の荒木がやってくる。死亡した弟の死因に疑念を抱き調査に来たのだ。彼の弟は交戦中に情婦と心中したとされていた。それまでの戦争映画とはまったく異なる西部劇風の戦争映画で、岡本監督の名を一躍高めた。65年までの間に計7作が作られた、岡本監督初期の代表的シリーズである。
戦国野郎
8月8日(木曜日)14時
8月11日(日曜日・祝日)11時
8月21日(水曜日)11時
監督:岡本喜八 出演:加山雄三 中谷一郎
1963年/35ミリ/モノクロ/97分/東宝
戦国時代。武田による冷酷な仕打ちに、忍者・越智吉丹は里を抜け出す。これを武田忍者・雀の三郎左がつけ狙う。吉丹は道中で知り合った武士に勧められて馬借隊に身を寄せる。吉丹が出会った武士は実は木下藤吉郎で馬借隊に銃の運搬を依頼していた。当時の最新兵器である“種ヶ島”を巡ってくり広げられる時代劇アクション映画。若き忍者・越智吉丹を加山雄三が演じている。
江分利満氏の優雅な生活
8月9日(金曜日)11時
8月11日(日曜日・祝日)14時
8月18日(日曜日)14時
監督:岡本喜八 出演:小林桂樹 新珠三千代
1963年/35ミリ/モノクロ/103分/東宝
36歳のサラリーマン・江分利は毎日が退屈で面白くない。江分利は酒癖が悪く、仕事の後もみんなが敬遠する。ある日江分利は雑誌記者と酒を飲み、原稿を書くことを安請け合いする。困った江分利は自分の半生を小説にするのだが、大反響となり直木賞を受賞する。原作は山口瞳の直木賞受賞作。アクション映画に定評があった岡本監督が、戦中派サラリーマンの屈折した心理を見事にとらえた傑作。アニメーションを挿入するなど演出にも工夫が凝らされている。
ああ爆弾
8月9日(金曜日)14時
8月12日(月曜日・休日)11時
8月17日(土曜日)11時
監督:岡本喜八 出演:伊藤雄之助 越路吹雪
1964年/35ミリ/カラー/95分/東宝
ヤクザの大名大作は刑期を終え3年ぶりに娑婆に出る。ところが大名組は市会議員に立候補している矢東弥三郎にのっとられていた。妻の梅子は宗教にのめり込み、大作の家族はすっかり落ちぶれていた。大作は子分の太郎が爆弾作りの名人であることから矢東を爆殺しようとする。コーネル・ウールリッチの小説に着想を得て岡本監督が脚本化した映画。斬新な音楽の使い方や凝った演出など岡本監督の才気あふれる作品。
日本のいちばん長い日
8月12日(月曜日・休日)14時
8月17日(土曜日)14時
8月22日(木曜日)14時
監督:岡本喜八 出演:三船敏郎 山村聰
1967年/35ミリ/モノクロ/175分/東宝
昭和20年8月14日。特別御前会議が開催され、日本政府はポツダム宣言の受諾を決定する。さらに天皇による終戦の言葉を全国にラジオ放送することが決まる。ところがクーデター計画を練っていた畑中少佐は玉音放送を中止すべく、天皇の声が記録された録音盤を奪おうとするのだった。大宅壮一が元軍人などへの取材により完成した同名原作の映画化。東宝創立35周年記念作品。終戦の一日が緊迫感溢れる映像で描かれる。
斬る
8月21日(水曜日)14時
8月24日(土曜日)11時
8月30日(金曜日)14時
監督:岡本喜八 出演:仲代達矢 高橋悦史
1968年/35ミリ/モノクロ/114分/東宝
天保4年の上州。武士を捨ててヤクザになった源太と、百姓から武士になりたい田畑半次郎が出会う。二人は山の峠で家老の殺害を目撃し、藩の改革を考える若手武士たちと、権力を握ろうとする家老との間の抗争に巻き込まれていく。山本周五郎の原作を翻案し岡本監督が脚本化したもの。過去の時代劇の様々な要素を盛り込んだような娯楽時代劇。
肉弾
8月15日(木曜日)14時
8月28日(水曜日)14時
8月31日(土曜日)11時
監督:岡本喜八 出演:寺田農 大谷直子
1968年/35ミリ/モノクロ/116分/「肉弾」を作る会=ATG
昭和20年。ドラム缶に乗って海を漂う「あいつ」は、戦争が終わったことも知らずに敵を待ち続ける。本作に登場する「あいつ」は監督自身を戯画化したもの。監督は陸軍予備士官学校に入校し、21歳の時終戦を迎えている。戦争のために空しく費やした青春の滑稽さと、やり場のない怒りが本作には溢れている。岡本監督の代表作。
ダイナマイトどんどん
8月23日(金曜日)14時
8月29日(木曜日)14時
8月31日(土曜日)14時
監督:岡本喜八 出演:菅原文太 北大路欣也
1978年/35ミリ/カラー/142分/大映=東映
昭和25年、北九州ではヤクザの抗争がエスカレートし、橋伝組と岡源組は一触即発の状態だった。そこで小倉警察は野球大会を開催し、民主的に事態を打開しようとする。そして野球の試合に名を借りたルール無用の喧嘩野球が始まる。ヤクザ映画とスポコン映画を合体させたような作品で、スピーディで軽快な岡本喜八監督の演出が光る、傑作コメディ映画である。
近頃なぜかチャールストン
8月18日(日曜日)11時
8月24日(土曜日)14時
8月28日(水曜日)11時
監督:岡本喜八 出演:利重剛 財津一郎
1981年/35ミリ/モノクロ/116分/喜八プロ=ATG
1981年、18歳の非行少年・次郎は警察に捕まる。次郎は警察で無銭飲食により捕まった老人たちに出会う。彼らは独立国「ヤマタイ国」の国民と称するのだった。次郎は彼らに帰化を許され、奇妙な共同生活が始まる。高齢化していく日本社会の中の老人たちを奇想天外な設定で描いたコメディ映画。当時の政治状況に対する岡本監督のメッセージ性も強く出ている。
ジャズ大名
8月22日(木曜日)11時
8月25日(日曜日)11時
8月30日(金曜日)11時
監督:岡本喜八 出演:古谷一行 財津一郎
1986年/35ミリ/カラー/85分/大映
南北戦争終了後、奴隷から解放されたジョーは3人の親戚と出会う。彼らは故郷アフリカに帰ろうとするが、騙されて香港行きの船に乗せられる。ところが嵐に遭い、彼らは駿河湾に打ち上げられる。筒井康隆の同名小説の映画化。黒人たちが音楽好きの大名と出会い、ジャムセッションを行うという奇想天外な物語。ラスト10分にも及ぶ牢獄でのジャムセッションは圧巻。
大誘拐 Rainbow Kids
8月23日(金曜日)11時
8月25日(日曜日)14時
8月29日(木曜日)11時
監督:岡本喜八 出演:北林谷栄 緒形拳
1991年/35ミリ/カラー/119分/喜八プロ=ニチメン=フジエイト
健次・正義・平太の3人の若者が、紀州一の山林王・柳川とし子を身代金目的で誘拐することを計画する。3人はとし子の誘拐に成功するのだが、とし子はいささかも動じず、逆に和歌山県警本部長・井狩の目を逃れるのはどうすればよいかを健次たちに語り始める。そして3人が隠れる家までも指示し始めるのだった。 79年に推理作家協会賞を受賞した天藤真の同名小説の映画化。誘拐された大金持ちの老婆が、誘拐犯たちを手玉に取って警察さえ出し抜くという痛快なコメディ映画。誘拐犯を操るとし子の本当の目的とは何か。とし子を演じる北林谷栄がさすがの演技を見せる。岡本監督の軽快な演出も見事な傑作。日本アカデミー賞最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀主演女優賞を受賞している。