夜はライトアップも楽しめる! 国の重要文化財、明治期の面影を残す2つの洋館めぐり
2017年1月17日建築物マニアならずとも、天神を訪れたらぜひ寄り道してほしいスポット、それが国の重要文化財に指定されている明治期に建てられた2つの洋館です。歩いて5分ほどの近距離にあるので、散策がてら、貴重な歴史スポットとしてあわせて訪れてほしい場所です。
フレンチルネッサンスを基調とする「旧福岡県公会堂貴賓館」
1つ目は、天神中央公園の中にある「旧福岡県公会堂貴賓館」。公園内の東側まで歩いていくと、グレーとペパーミントグリーンの配色が美しい洋風建築の建物が見えてきます。
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天神中央公園内の東側にあります
「貴賓館」は、明治時代のフレンチルネッサンスを基調とする数少ない木造公共建築物。もともとは「旧福岡県公会堂」の中の建物の1つでした。1910年(明治43年)、第13回九州沖縄八県連合共進会の開催に際し、会期中の来賓接待所を兼ねて共進会会場だった東側の現在地に建設されました。
九州・沖縄を盛り上げた博覧会会場
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国の重要文化財として指定・保存されています
九州沖縄八県連合共進会とは、8県が持ち回りで、産業技術の改良や発展を推進することを目的に明治15年から始まったもの。今でいう物産展を兼ねた博覧会のようなもので、13回目の会では来場者が延べ90万人を超えたそうです。開催された60日間、毎日のように工業、商業、学会など各分野の大会も催されました。
1910年(明治43年)3月に竣工した貴賓館は、同年4月には閑院宮御夫妻の宿泊所として利用されたほか、共進会開催中は来賓を接待して夜会が催されたそうです。
石造に擬した木造2階建建築
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石柱と八角塔が印象的なデザイン
外観は、石柱の玄関ポーチや八角塔の優美な意匠が印象的。外壁は1階窓台から下の腰壁に白い化粧タイルを貼り、1階のモルタル壁には目地が入っています。また、2階の窓額縁や軒蛇腹(のきじゃばら)をモルタルで造り、石造りに見せた見事な造りがポイントです。
随所に目を奪われる優美な内装
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階段がシンメトリーに配置された玄関広間
では、中へ入ってみましょう。入口で入場料を払う際に、ボランティアガイドの案内もお願いできます。パンフレットにはないエピソードも交えて、丁寧に説明してもらえますので、ぜひご利用ください。
玄関を入った瞬間から、思わずため息。正面に重厚な檜造りの階段と広間が迎えてくれます。1階は、左右に食堂、応接室、遊技室、トイレなどがあり、建設にまつわる資料や展示品も紹介されています。
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遊技室
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4カ所残る正方形はビリヤード台が置かれていた跡だそう
2階へ上がる際は、アカンサスの葉を模した階段の手すりに注目。一枚木をくり貫いて造られた曲線の部分など、ディテールにまで設計者の強いこだわりが見てとれます。
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アカンサスの葉模様で装飾された手すり
2階には、貴賓室、寝室、化粧室、談話室などがあります。床は板張りで、壁は白漆喰塗と腰板張り。天井は木製または木骨を下地に漆喰を塗った格縁(ごうぶち)で幾何学模様を造り、各室異なった意匠が目を引きます。
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ゴージャスな貴賓室。カーテンや調度品などは復元されています。
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部屋ごとに異なる天井のデザインも見どころ
また、貴賓室などには大理石製の暖炉が設けられています。当時、最先端のガスを使った暖炉だったそうです。
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談話室
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2階廊下も絵になる美しさ
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随所に施された繊細なレリーフや縁どり、蝶つがいの装飾まで見逃せません
1、2階ともに部屋数も多く見応えがあるので、時間が経つのも忘れて見とれてしまいます。当時の華やかな夜会のシーンが思い浮かんでくるよう。
カフェでティータイムも
共進会開催後は県の公会堂として利用されていた「旧福岡県公会堂」ですが、戦後は福岡高等裁判所、県立水産高等学校などに転用され、1956年(昭和31年)以降は福岡県教育庁舎として使用されました。
その後、福岡県庁新庁舎建設、移転に伴って、教育委員会も1981年(昭和56年)に移転。その跡地は「天神中央公園」の一部になりました。そのため跡地内の諸施設は取り壊されましたが、旧公会堂のうち貴賓館のみが保存され、今に至ります。
館内には、レトロモダンな雰囲気をそのまま残すカフェスペースも。見学後に憩いのひとときを味わうのもまた格別です。
[旧福岡県公会堂貴賓館]
福岡市中央区西中洲6-29
Tel 092-751-4416
開館時間/9:00〜17:00
休館日/月曜日(休日の場合は翌日休み)及び12月29日から1月3日まで
入館料/大人240円・児童120円(15歳未満)
団体(30名以上より)大人190円・児童95円
※6歳未満、65歳以上の方は無料。
東京駅を設計した辰野金吾氏が手がけた「福岡市赤煉瓦文化館」
続いて、2つ目の洋館は「福岡市赤煉瓦文化館」です。貴賓館が建設された1年前、1909年(明治42年)に日本生命保険株式会社九州支店の社屋として建てられました。設計士は、東京駅を設計した辰野金吾工学博士、片岡安工学士によるもので、国の重要文化財に指定されています。
赤レンガを使った華やかな風貌
通りでひと際目を引く外観は、中央にドームを載せて、小塔や屋根窓を多彩に配した屋根、赤煉瓦に白い花崗岩の帯を装飾的に使った外壁が魅力的。ロンドンに留学していた辰野氏が19世紀末にイギリスで流行したクイーンアン様式の建築スタイルを応用したことから、「辰野式」と呼ばれています。
福岡の文化サロンとして機能
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玄関ホールから、その美しさにうっとり。館内見所マップを手に、回りましょう
大理石で装飾されたエントランスに足を踏み入れると、アール・ヌーヴォー様式でまとめられた美しいカウンターが出迎えてくれます。1階は展示室、2階は会議室(有料)。館内の大理石の玄関や照明器具、カーテンなどは建築当時の仕様に復元されています。
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2階へ続く階段。天井や窓、手すりなど細やかなデザインに魅入ってしまいます
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2階は一般利用できる3つの会議室。かつては、医員室、診査室、会議室、応接室として使われていました
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一番広い会議室。マントルピース(壁に造り付けられた暖炉のまわりに施された装飾)が格式を高めています
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現在は、句会や読書会、ミニコンサートなどの文化活動の場に
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屋上へ続く螺旋階段(進入禁止)の曲線も空間に調和
この建物は、戦後も日本生命のオフィスとして使われた後、1969年(昭和44年)に国の重要文化財に指定され、市に譲渡されました。市歴史資料館として活用された後、1994年(平成6年)には建築当時の内装を復元し、「福岡市赤煉瓦文化館」としてリニューアルオープン。
[福岡市赤煉瓦文化館]
福岡市中央区天神1-15-30
Tel 092-722-4666
開館時間/9:00〜21:00
入館料/無料
休館日/月曜日(休日の場合は翌日休み)及び12月28日から1月4日まで
明治期の産業や文化を物語る洋館めぐり、いかがでしたか。往時の英華を漂わせる洋風建築の粋と技が集まった2つの重要文化財は、福岡の発展を知る上でも訪れる価値のあるスポットといえそうです。
夜のライトアップもあわせて、来福の記念にぜひ訪れてみてください。