「六月博多座大歌舞伎」松本幸四郎改め二代目松本白鸚・市川染五郎改め十代目松本幸四郎襲名披露 2018年
開催終了 中洲川端エリア6月2日(土)からスタートし、6月26日(火)に千穐楽を迎える毎年恒例の「六月博多座大歌舞伎」が、博多座で上演されます。
松本幸四郎改め二代目松本白鸚、市川染五郎改め十代目松本幸四郎の襲名披露が行われます。
みどころ《 昼の部 》
伊達の十役
文化十二(1815)年7月、七代目市川團十郎が初演した鶴屋南北作『 慙紅葉汗顔見勢』は、伊達騒動に登場する善悪男女の十役を一人で演じ分ける破天荒な舞台であった。しかし台本は現存せず、わずかな資料と現在の伊達騒動をもとに昭和五十四年に奈河彰輔と市川猿翁(三代目猿之助)が作り上げたのがこの狂言である。四十数回の早替り、宙乗り、屋体崩しなど、猿之助歌舞伎の集大成の舞台で、幸四郎は染五郎時代に猿翁の指導を受けて博多座でも上演している。
開幕すると幸四郎が裃姿で舞台に登場し、これから演じる十役の写真を使って、あらすじと個々の人物紹介をする。続く発端の「稲村ヶ崎」は、足利家の重臣 仁木弾正が、処刑された 赤松満祐の亡霊から鼠の妖術を伝授される話と、それを物陰から見る元足利家の家臣の 絹川与右衛門の姿を見せる三役早替りが見もの。
序幕は 足利頼兼の放蕩を描いた場で、頼兼は大磯の遊女 高尾太夫の色香に迷い廓通いを続けている。弾正は頼兼の叔父の大江鬼貫と結んで、頼兼暗殺を企て若君鶴千代を暗殺する毒薬を手に入れた。その手先が小悪党の 土手の道哲である。一方、与右衛門は、足利家を守るため女房 累の姉である高尾太夫を殺害する。「三浦屋奥座敷」では、殺す与右衛門、殺される高尾、道哲の早替りが見ものである。
二幕目の「宝藏寺土橋堤」では高尾の恨みで顔が醜くなる累の悲劇を描き、最後は「だんまり」という様式美に溢れた歌舞伎演出で幕になる。
三幕は一転して、 乳人の 政岡が単身で主君鶴千代を守り抜く姿を描いた有名な「御殿」になる。政岡は女方きっての大役で、悲しみに堪えて忠義一筋に生きる烈女の姿を演じる。幸四郎が女方の大役を演じる。続く「床下」では 荒獅子男之助の勇壮な荒事の後に、仁木弾正の宙乗りでの引っ込みになる。役柄の違う三役の演じ分けが大きな見ものだ。
四幕目の「奥書院」は颯爽とした捌き役の 細川勝元と、与右衛門、道哲を早替りで見せ、「白洲」では弾正の大立ち回りと、妖術で屋体崩しになるスペクタクルが見もの。最後は弾正の妖術が敗れ、悪は滅びて足利家は安泰になる。
ストーリーが分かり易く、スピード感に溢れ、スペクタクルに富んだ舞台である。
みどころ《 夜の部 》
俊寛
享保4(1719)年に近松門左衛門が書いた時代浄瑠璃『平家女護島』の二段目。平家討伐の企てが顕れて鬼界ヶ島に流された俊寛の物語で、同名の能を素材にしている。前半は飢えと孤独に苦しむ俊寛の姿、流人仲間の成経が島の乙女千鳥と恋仲になった話を聞いて、妻東屋を思い出す俊寛の人柄を描く。赦免船が着いてからは一人帰国を許されぬ俊寛の絶望、平重盛の情で帰国が叶うと知った喜び、東屋が殺されたと聞き、身を犠牲にする俊寛の心の動きを綴っていく。船を見送って呆然とする幕切れに人間の煩悩の深さが見える。
口上
一座の幹部がそれぞれの家独自の色を染めた裃を着て着座し、襲名のお祝いを述べる一幕。歌舞伎の芸が次の世代に受け継がれていく目出度さを示している。
魚屋宗五郎
河竹黙阿弥が明治16(1883)年に書いた『 新皿屋舗月雨暈』の後半を独立させた狂言。旗本磯部家に奉公していた妹のお蔦が姦通の罪で手討になったと聞き、一家は悲嘆にくれている。実直で分別のある宗五郎はいきりたつ家族を抑えてきたが、お蔦の同僚のおなぎから妹が無実だったと聞き、禁じていた酒に手を出し酒乱になっていく。その様子を黒御簾音楽と周囲の役の動きで写実的に見せていく。綿密に計算された世話物の演技演出が見もの。「玄関先」では幸せだった昔を振り返る宗五郎の長台詞が聞きもので、庶民の生活感が浮かびあがる。
春興鏡獅子
明治26(1893)年初演の福地桜痴作、杵屋正次郎作曲の長唄舞踊。江戸大奥の鏡ひきの日に女小姓弥生が獅子の舞を舞うという趣向で、前段は可憐な姿で川崎音頭を踊り、御殿女中が花見を楽しむ心で花から青葉に移る田舎の風景を描く。その後塗扇を手に満開の牡丹が咲く情景、花に戯れる獅子の姿を見せ、祭壇に備えた獅子頭を手に舞い始めるが、獅子頭に獅子の精が宿り、弥生は引きずられて花道を引っ込む。後段は二人の胡蝶の精の踊りの後、獅子の精が現れ豪快な狂いを見せる。前半の女小姓と後半の獅子の精の踊り分けが見もの。
◆残席状況など、詳細は博多座公式ホームページでご確認下さい。