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ワインのように個性を味わうメイド・イン・福岡のクラフトビール

ここ数年でじわじわと人気が高まってきたクラフトビール。ビールといえば夏に欠かせないものという印象が強いですが、ホップの苦みやフルーティな香りなど個性もさまざまなクラフトビールは、言うなればワインと同じように、相性のいい料理と一緒に年中味わいたいお酒として認識されてきているようです。

○大名で人気のメキシカンバーがプロデュースする福岡発ローカルブルワリー『FUKUOKA CRAFT by エルボラーチョ』

天神駅から徒歩圏内にある大名エリア。若者や国内外の観光客で賑わいを見せる紺屋町商店街の近くに、オープンスタイルのバーがあります。その名も『FUKUOKA CRAFT by エルボラーチョ』。カウンターとテーブル席でラフに構成された店内には、中央にクラフトビールを注ぐためのタップがずらりと並び、店内に隣接する小さなスペースにある醸造タンクの姿が目を引きます。

ブルーワーのデイヴィッド・ヴィクターさん

ここで、メイド・イン・福岡のクラフトビールを作っているのが、ブルーワー(ビール醸造技術者)のデイヴィッド・ヴィクターさん。アメリカ・ミシガン州出身のデイヴィッドさんはビール好きが高じて、2年ほど前からクラフトビールづくりが盛んなオレゴンのポートランドや日本のブルワリーに赴き、勉強を始めたといいます。

「日本では関東や福岡のブルワリーを回って勉強しました。『八女ブルワリー』をはじめ、山梨の『アップサイダーブルーム』で短期集中的な研修を受けた後、2018年6月からここでブルワリーを立ち上げました。」

『FUKUOKA CRAFT by エルボラーチョ』のオーナー、杉山芳文さん

『FUKUOKA CRAFT』は、本場メキシコで修行したオーナーの感性を生かし、店舗展開するメキシコ料理店『エルボラーチョ』の姉妹店。タコスやナチョス、肉料理といった本格料理とともに、世界のビールやオリジナルテキーラなどのお酒も多種多彩に揃うカジュアルなバーとして2017年7月にオープンしました。もともとお客さんとして来ていたデイヴィッドさん。「福岡にはまだまだブルワリーが少ないし、チャンスがあるかも」と自らのブルワリーを立ち上げる企画を進めていたところ、オーナーの耳に入り、面接のその日に意気投合したと笑顔を見せます。

機材はオレゴン・ポートランドで修行したブルワリーと同じものを使用

通りから気付かないほどの小さな醸造所には、ビール麦汁をつくる仕込みタンクと発酵タンクが設置され、デイヴィッドさん一人の手によって仕上げから樽に詰めるまでの工程が行われます。一度の仕込みで、出来上がる量は450リットル。平均して約1ヶ月分の量になるそうです。

デイヴィッドさんがメインで提供しているクラフトビールは「ペールエール」、「へイジーIPA」という2種類の定番ビール。これに1周年を迎えた記念ビールとして醸造した「ブラックIPA」など期間限定のビールも不定期で登場します。

知ってるようで知らない クラフトビールの良さとは?

左から、柑橘のように爽やかな味わいの「ペールエール」と、トロピカルなコクがあり口当たり滑らかな「ヘイジーIPA」

では、クラフトビールには実際、どんな魅力があるのでしょう。

「ビールは何千年も前から作られていて丈夫な液体なので、保存料は必要ないんですね。必要な材料は基本的に、麦芽(発芽させた大麦)、ホップ(苦みや香りをつけるハーブ)、酵母(発酵に必要な菌類)、水のみ。王手の缶ビールは大量生産でできるだけ安く多くの人に届くように、大多数の人が受け入れやすい味になっています。アメリカのクラフトブルワリーでは、伝統的な原料や製法でつくること、小規模生産、資本提携されず独立していることがクラフトビールの定義の条件としてあるんですね。私にとってのクラフトビールとは、造り手自身が美味しい、造りたいと思うビールを妥協せずに追求し表現する、個性的で良質なビールのことだと思っています。」

ガラス張りにして醸造所が見える造りになっている

現在、デイヴィッドさんがビールの原料として使っているのは、麦芽はドイツ、アメリカ産、ホップはオーストラリア、アメリカ産、水は福岡の水道水を濾過処理しており「軟水で使いやすい」といいます。

「クラフトビールは地域密着型でローカルのものを使うことも定義の中には緩やかにあります。福岡県内では、『杉能舎』が福岡県産の大麦を、『八女ブルワリー』は佐賀県産の麦芽を使っていますし、大手ではキリンも福岡県産の大麦を使っています。うちではまだそこまではできませんが、去年はコーヒースタウトの黒ビールをつくりました。同じ大名にある『マヌコーヒー』とのコラボで、ビールに合うコーヒーを特別に焙煎してもらったんです。今年の冬にまた造りたいねという話はしているんですよ。」

カジュアルに飲めるカウンターの奥にはゆっくり食事が楽しめるテーブル席も

続いて、定番ビールの味の特徴を聞いてみましょう。

「度数を見れば、ビールの濃さとたいてい比例しているんですよ」とデイヴィッドさん。アメリカンビールの定番である「ペールエール」は5%と世界的にも平均的な度数。『FUKUOKA CRAFT』では苦味を抑えながら、ホップの香りと味を引き出し、できるだけ多くの飲み手にクラフトビールを体験・理解してもらえるようなユニークな味わいに仕上げているそうです。

「ヘイジーIPA」はアメリカで流行している「ニューイングランドIPA」の愛称。通常の3〜5倍のホップを使用するため、ビールが濁ることからヘイジー(濁った)IPAと呼ばれています。デイヴィッドさんが造る「ヘイジーIPA」は、オレゴンの修業先でのレシピを再現したもの。とはいえ、機材の具合や材料の微妙な差、造る地域の環境が味に反映するので、まったく同じ味ではないところがまた面白いといいます。

自家製のクラフトビール2〜3種類を含め、常時10種類の樽生ビールが楽しめる

味の決め手を左右する、稀少なホップ使いもポイントです。

「昔はホップ=苦いという認識があったと思うんですけれど、今は扱い方によって、オレンジ、マンゴーといったフルーツや花、松やパインといったウッドなど自然の成分や香りが味に出てくるんですね。その組み合わせによって味に個性が出て違いが生まれてくるし、さらにドライホップという製法でまた差が出るんです」と話を続けます。

「これは発酵してビールができた後、冷たい状態でタンクに入れて浸けておく製法なのですが、苦味が入らずにホップの中のエッセンスオイルがビールに浸透していくんですよ。アメリカの典型的なペールエールはカラメルのように麦芽に甘味が付いたものになりますが、私のブルワリーでは、ストレートな麦芽とホップを生かしたすっきりした味わいが特徴です。」

デイヴィッドさんの造る「ペールエール」には3種類、「ヘイジーIPA」には3〜5種類のホップをブレンドして自社の味わいを表現しています。

以前はPCの前に一日中いるような仕事をしていたデイヴィッドさん。クラフトビールを造る作業は「アナログ」だと実感しているそう。

「スチームの圧力、流体の温度、流れや変動、酵母の化学反応など、法則をよく理解し、予測しながら実験的に造っていって味を導き出すのが私の仕事。材料や熱の入れ方、自分の解釈などで、すべての工程において差が出るから『作り手によって多様な味が楽しめる』のがクラフトビールの醍醐味ですね。」

そんなデイヴィッドさん入魂のクラフトビールをはじめ、多種多様な味を美味しく味わうために、どういう飲み方をしたらいいか伺いました。

嬉しい『飲み比べセット』(4種類・980円/6種類・1480円)

「メニューを見れば、ライトからヘビーまで色の濃淡で見分けが付くようになっています。ヘイジーIPAはホップ感が強いので、ファーストビールとしては、デリケートな味わいのペールエールから味わってみてほしいです。まずは『飲み比べセット』でテイスティングして、とくに気に入ったビールを味わってください。」

人気メニューは「ビーフタコス」やオリジナルトルティーヤなど

観光客が多く、アジアや欧米の旅行客も多いという『FUKUOKA CRAFT』。旅行者からは「日本にこういうブルワリーがあるとは思わなかった」、「福岡に来て一番美味しいビールです」といった声や、店内に入ってからタンクがあることに気付いてびっくりする人も少なくないそう。

「昔の日本の地ビールといえば、ラガーとかドイツ系の麦芽で造られることが多かったですが、今の若手ブルーワーはIPAをはじめ、乳酸菌を入れて酸味を効かせたフルーティなものなどテイストもさまざまなものに挑戦しているし、クラフトビールの世界が広がっていると感じます。私自身はまだまだ経験が浅いのと、現状ではタンク数も足りないので、安定した味を維持して、私が飲みたいと思うビールをこれからもしっかり届けていきたいです。」

○DATA

店舗名:FUKUOKA CRAFT
住所:福岡市中央区大名1-11-4
電話:092-791-1494
営業時間:17時00分〜26時00分(土日祝日は15時00分〜)
店休日:無休

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